いままでとこれから

今回出品をお願いした三作家、一組に各自のいままでとこれからについてお聞きしました。
荒川創也の場合

Q、このような美術の業界といいますか、現在やっている事を始めるきっかけとなった出来事などをお教え願えますか?できれば具体的に。初期衝動といえばなんでしょうか?
 
A、どこを始まりと捉えたらいいかは、なかなか難しいと思いますが、やはり大学を卒業したときに、ほとんどの人があっさりと美術活動をやめていったと感じた悲しさが初期の大きなモチベーションにつながっていると思います。どうしてやめていったのか?どういう状態だったら、やめなくてもよかったのか?僕も同じようにやめてゆくのか?僕はどういう状態だったらやめなくてもよいのか?
 こういった疑問や煩悶から、現在につながる作品の初期作であるビデオ作品「僕ちんビッグになりたいでちゅ」を制作しました。それはビッグスターにくらいならないと日本の美術界では美術だけでは生活していけないとの考えからでした。それから現在5年ほどたちますが、アーティストとしてどうやって生きて行くのかという疑問にまだ相変わらず答えを出し続けています。

Q、これからの制作、発表のスタンスをどのようなもにしていこうとお考えですか?できれば具体的に。またこれから具体的に進めているプロジェクト、または作品についてお話しできる範囲でお教え願えますか?

A、発表のスタンスというものは具体的にはあまり変わらないとは思いますが、今年はアーティストが経営するギャラリーとしてギャラリーの立ち上げをするつもりでいます。
 また具体的なプロジェクトに関しては、パブリックアートに含まれる内容と文脈についてのアプローチをするプロジェクトと、自分の過去を語るアプローチとして、焼き物に関するプロジェクトが進行中です。意識的に避けてきた親父が見た美というものを僕がどう解釈するかということに、「十分美しい」という感覚を脱却して、豊かな視覚言語をまとった作品を作ることができる可能性を感じています。

木村泰平の場合


Q、このような美術の業界といいますか、現在やっている事を始めるきっかけとなった出来事などをお教え願えますか?できれば具体的に。初期衝動といえばなんでしょうか?

 

A、特にありません。ゆるやかに。

 

Q、有り難うございます。では影響を受けた作家、作品についてお聞きできますか?

 

A、影響を受けた作品は、過去・現代・同世代を含めて山のようにあるので、挙げようと思うと切りがありません。と同時に、それらに触れたことで自分に何か変化が起こったかというと、

それは正直定かではありません。その一方で、テレビ、映画やスポーツなど、身近なメディアを通した経験の方が、より現在の自分に影響を与えていると思います。幼い頃から消費してきた娯楽、報道、政治のスペクタクル。その弊害として広がる歴史・文脈との溝を、個人がメディウムとなって埋めることが、どうやら美術作家の仕事なんだなとこの頃強く感じます。

 

Q、これからの制作、発表のスタンスをどのようなもにしていこうとお考えですか?できれば具体的に。またこれから具体的に進めているプロジェクト、または作品についてお話しできる範囲でお教え願えますか?

A、まずはより素直に。作品そのものの展開としては、これまでは瞬間的な力、始点と終点がはっきりとある運動や現象を扱ってきましたが、今後は植物の蔦のような、緩やか且つ力強く働く力を表現したいと考えています。

threeの場合
 
Q、このような美術の業界といいますか、現在やっている事を始めるきっかけとなった出来事などをお教え願えますか?できれば具体的に。初期衝動といえばなんでしょうか?
 
A、活動はいくつかのコンペティションへの出展をきっかけに現在に至ります。
メンバーの1人が、大学時代に出展したコンペでの作品をきっかけに個展をさせていただいたり、
threeでの最初の作品を発表したのもコンペでした。

Q、これからの制作、発表のスタンスをどのようなものにしていこうとお考えですか?できれば具体的に。
またこれから具体的に進めているプロジェクト、または作品についてお話しできる範囲でお教え願えますか?
 
A、継続的に制作と発表をしていけることが何よりです。制作についてはより効率的に。発表はよりわかりやすいものにしていければと思います。
 今は年末に開催予定の個展作品を中心に制作しています。作品はフィギュアを素材としたものです。
ユミソンの場合

Q、このような美術の業界といいますか、現在やっている事を始めるきっかけとなった出来事などをお教え願えますか?できれば具体的に。初期衝動といえばなんでしょうか?

A、9歳が終わろうとしている初冬の日。小学校への通学路の横断歩道。これを渡ると、10歳になってしまう。二桁の歳になる私は、もう子どもではない。突然に強烈に今までとは違う世界を認識しました。横断歩道を渡ると変わってしまう世界を見る感覚は、大人への道ではなく、子どもじみた妄想です。
そして、私の誕生日は夏の終わりなので初冬という記憶は正しくありません。しかし昨日の事のような強い刺激で記憶されています。その他にも、幾つか思い当たる、アーティストへの気づきの記憶があります。過去の曖昧でいて強い記憶から、現在の立場の正当性を見つけようとするこの質問は、興味深いです。

Q、これからの制作、発表のスタンスをどのようなもにしていこうとお考えですか?できれば具体的に。
またこれから具体的に進めているプロジェクト、または作品についてお話しできる範囲でお教え願えますか?

A、繰り返し、制作を続けます。制作のコンセプトは今までと変わりませんが、明確な計画はもちろん1人では立てられるものではありません。展覧会を組み立てる様々な種類の人たちと、制作を続けていけたらと考えます。
 今年の予定は、2013年9月から始まる、福島県での芸術祭『土湯アラフドアートアニュアル』の総合ディレクターをしています。詳しくはWebサイトをご覧ください。http://arafudo.com
また同時期に『中之条ビエンナーレ』に参加、11月には『中京大学Cスクエア』での個展が控えています。その他の予定は、個人のWebサイトをご覧ください。 yumisong.net