展覧会を終えて(牛島均編)/渡辺秀亮

 今回の展覧会において、当初は牛島氏の金沢での発表作品「ころがるさきの玉、ころがる玉のさき」の展示を考えていた。過去数年間にわたり金沢21世紀美術館での発表を共にし、様々な展開を見せていた作品で、人が玉の載った自転車に乗った状態で展示会場まで移動するなど、美術館の外に出て行く様子を記録・展示したかったのだが、制作プロセスで記したような諸事情により実現しなかった。

 以後、様々な可能性を模索することとなったが、基地作りのワークショップなど、人々の集う場所をつくり出し関わる人で次々と変化していく作品をつくり出す牛島氏にとって「屋根があれば、どこでも家|my own roof, makes my home」は、まさに鑑賞者を参加者にし、関わる人々を巻き込んでいく作品である。参加者となった人は屋根を持って出歩くことにより、作品の一部として重要な存在となり、まさに作品そのものとなっていき、それを目の当たりにする鑑賞者もその場に偶然居合わせただけだが、作品を存在させる重要な要素となっていく。それは突然作り出された作品内部と外部の接点があらゆるところで存在しうることを意味している。ゆえに、本来は多くの参加者に実際に屋外で体験してもらってこそ作品の完成といえるのであろうが、惜しむらくは会場内では体験してくれた鑑賞者はいたが、さすがに屋外まで持ち出してくれる方がいなかったことである。ワークショップなど参加者を集うようなイベントをしてこそ牛嶋氏の作品「屋根があれば、どこでも家」の本当の意味での完成となったであろう。

 

渡辺秀亮